₋ IUの教育の良さを感じられるのは、どのようなところですか?
私思ったのですけれども、ディーン・ベインがすごく偉いなぁと思ったのは、当時本当にそういう世界のトップクラスの先生方をいろんな分野で連れてこられて、全員ブルーミントンに住んでもらったんです。ニューヨークから通うとか、シカゴから通うっていうのはなかったの。今少しなんかあるみたいだけど、大きくなっちゃっているから。
例えばシュタルケル先生みたいに世界中を廻られている方は、逆にブルーミントンでは、静かで平和に音楽だけやっていればいいし、10分で自分のお家へ帰れるしね。だから本当に落ち着く、そういう場であったのだと思うけど。そういう先生方がブルーミントンに住むことによって、生徒達にとってもね、先生がいつもいらっしゃるし。
ただ僕がこの間プレスラー先生とお話した時、先生が、IU の音楽学部の一つの強みはそれだったんだけど、今ちょっと変わっちゃって残念だ、って事はおっしゃっていましたね。
でもその先生方が、IUのミュージックスクールで教えているってことにすごくプライドを持っていらした。学校のために何とか良くするとか、世界のトップクラスにするとか、そういう気概と言うか、姿勢がすごくあって、それがやっぱりすごい強みだったんじゃないかなあ、と思いますね。
- 少し郊外に離れているからそういう仲間意識とか、そういうのもあるのでしょうかね?
都会にいるとなかなか出たり入ったりがあるから
ええ、そうですね。私が教えていた頃、チェロでは四人先生がいたんですね。シュタルケル先生にヘルガ(Helga Ulsamer Winold)さんと、それからエミリオ(Emilio Colon)と、私で。やっぱりみんなの家がほとんど近いわけ、ああいうところですから車で3分とかそういう距離で、だからよくチェロの先生方で集まったりとか、まあそういうことがすぐ出来ましたしね。
特にチェロの場合はね、実はどの先生にレッスンを受けてもいい、ということになっていたわけ。もちろん各々のクラスがあるのだけれども、全員が一緒になる“チェロクラス“なんかも4階でやったりしていましたし。ですから本当にそういう意味で一つの教育の場になるようにね。やっぱり先生方は少しずつ、一人ずつ違いますからね。そうすると学生たちにとっても違ったオピニオンとか、いろいろな解釈とかを受けられてすごく良かったんじゃあないかなあ、と思いますね。あとIUで僕が知っている限りでは、 クラリネットの三人の先生がすごく仲良くて一緒にやられていたけど、でもそういうのも近くに住んでいたりすると可能ですよね。
– 仲間意識が深まりますよね。
えーそうですね。その一方で、自分が先生をやってよく思うんですけど 、いろんな生徒が、何て言うかまあ、ピンからキリって言う感じでいて、でその下の方の生徒には、なかなか、あなたは違う方向に行った方がいいですよ、なんて言えない。 特に今は言えないんだよね、だめだとかそういう風に言っちゃいけない時代だから。(大笑)
まあ昔はそういう時代ではなかったんですが、それをシュタルケル先生はやっぱり結構はっきりおっしゃったのね、生徒に対して。やはりあなたはね、
”I think you’d bettter do something else.”
でもそういう方に限ってと言っては変だけれども 、そうであればあるほどすごく一生懸命勉強するし、音楽大好きで、しんから好きで、もう一生懸命なの。だから本当に先生としてはね、言いにくかったと思うんだけど、それを言えた。で絶対に先生が間違っていなかったってのは、 これはすごいことだと思うんですよね。私は、後でもいつも思うのですけれど。
本当にシュタルケル先生は頭が抜群に良い方だったから、いろんな意味ですごく面白い。いろんなことを教えていただけたかなと思っていますね、私は。だから生涯にわたって先生だったと思っていますよね、はい。いやあでも本当に。
– クラスには留学生が何人も?
はいそうですね。まあもちろんマジョリティーはいわゆるアメリカ人だけどやっぱりああいう国ですから何系というのがあって.韓国系の方もあったし、もちろんベトナム系も、中国系も ドイツ系もいたし、本当に優秀で素晴らしかったです。
– 後輩のAlumniや、将来米国で勉強したい人に向けて、何かメッセージをいただけますか?
そうですね、やはり私すごく思うのは、これはたぶんもともとプレジデント・ウェルズの方針だと思うのですが、非常にいろんな意味でオープンな雰囲気の学校ですよね。今も非常にその、現在の大統領(ドナルド・トランプ)があの調子だから、それにすごく反発してね、インターナショナル・スチューデントに対しても 、もう IU はそんなこと絶対やらないとか。そういうこういろんな意味ですごくオープンな学校で、本当に素晴らしい大学ですし、それは皆さんよくご存知だけど、幅広い面で何か深く追求できる校風があるんじゃあないかと、それは音楽学部だけに限らない、それがやはり素晴らしいなぁ、と思います。
ですから折角もし行くのだったら、自分自身を可能な限り伸ばして欲しいと思います。そして、アメリカの良いところなんだけど、そういう努力をすると今度は学校が100%バックアップしてくれるのですよね、いろんな意味で。そういう環境にも恵まれていますし。
それから先ほども言いましたけど、ある意味で教える先生方がね、本当に親のように見てくださって。私の場合、もうなにしろ1年目に行った時にはシュタルケル先生のスタジオとプレスラー先生のスタジオとね三つしか離れてませんので、 そうするともうよく会うわけですよね大先生と、こっちはまだ1年生だから。で会うとね、プレスラー先生から”お前ちゃんと practice してるか”って必ず聞かれるわけ、そういう雰囲気がなんかあったですね。一つは近くに住んでいるということもあると思うのですけれども、シュタルケル先生にしても、ギンゴールド先生にしてもそうなんだけど、その何て言うのかな、非常に人間味があるんですよね。
私が学生の頃、例えばギンゴールド先生は、IUに来られる前はずっと演奏だけされていたのだけれど、IU に来たら、何しろもう教えるんだ、となられて。 だから、彼のスタジオっていうのは、1年に生徒が35人ぐらいいたわけ。しかも普通に教えるだけじゃなくて、もし生徒がリサイタルがあるとか、どこかで演奏するとかがあると、エクストラレッスンやったり。それからもちろんご自分でも演奏なさってたしね。だから僕はまだ本当に学生だったんだけれども、それこそギンゴールド先生とアメリカ演奏旅行もさせていただいたし、ウィーンから来られたピアニストのロバート先生(Walter Robert)とで、ベートーベンのトリプル・コンチェルトなんか弾かせていただいたことあるんですよ。それくらいオープンだし、いいものを持ったらすごく助けてくれる。
そのギンゴールド先生で面白かったのは、ものすごく忙しい方なわけ。ですから何しろ毎朝8時に来てまあ少し練習して、それからもう9時ぐらいからずっーと教えて、 夜もだから練習するか、教えないとならないので 、家に帰れないわけ。奥さんヴァイオリニストだったんだけど、 必ずその6時ぐらいになると電話するわけね、奥さんに。
”Hello babyDoll! This is Joe. How are you? Sorry, I can’t come back to the dinner tonight, so enjoy yourself, bye! ” (ギンゴールド先生の声色で)
こうだったの、毎日、冗談の毎日!
だからこう言うの忘れられないんですよ。(大笑)
(注:ギンゴールド先生の奥様はヴァイオリニストでBloomington Symphony Orchestraのコンサートマスターもなされていた方)
まあでも本当にね、そういうギンゴールド先生にしろ、シュタルケル先生にしろ、生徒のいろんな悩みなんかも聞いてくださっていたし、それがやっぱり IU のすごくいいところだなあと思いましたね。
それにね、また先生方が積極的にステューデント・パーティーなんかもしてくださって、お宅にね生徒を呼んだりとか。まあそれがひとつの生徒たちの楽しみで、シュタルケル先生の場合は特に、ご自分の家にブルーミントンで三つしかないインドアプールがあって、そこで生徒が泳げたりとか、まあそういうのがありました。
ですから大学と街と先生方、それから学生たちがもう本当に一体になってる、そういう気風がある。それがやっぱりすごくいいところであるし、強みなのじゃないかなぁ、と私は思ってますけどもね 。
– んーん、なるほどね。
これは音楽に関わらず、 他学部も共通するかもしれないですね、その一体感っていうかな 。大都市から離れてることがまたいいんですよね。
はい。それに全体にアメリカの良い所だと思うんですけど、私も実はシュタルケル先生に結構初めのうちに言われたんだけど、まず、「伝統を学ばなければいけない」と言われたわけ。伝統を学んで、そういうむしろ基本的なことを身につけて、でもやはり新しいものを追求してかなきゃ。この二つがいつもあることで大学は研究機関だっていうねえ、立ち位置もあって、これがすごくはっきりした学校だなって、いうのが、今でもすごく覚えていますね。
– いいですね
それにね、卒業生の方がもう本当に全世界にいらっしゃるし、音楽だけじゃなくて。ですからね、ひょんなところで IU で勉強したなんて人に会うし。まあそういうのがある意味でどこへ行ってもね、結構私にとっては安心感と言っては変だけれども、そういうのは絶対にあると思います。
でやっぱりね IU FOUNDATION にしても僕偉いなぁと思うの、あれだけ寄付活動をなさって。
– 本当に、そうですね。